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西村敏彦のほらふき・ドンドン

「伝統構法」私観
 「西の風だより」は西村利恵子(編集)、西村敏彦(発行)という建前になっている。ゆえに囲みコラム以外の文責は全部、西村利恵子にあるノダ。と前置きした後に、発行人の反省文が続くノダ。
 前回の「西の風だより・41」において、エコハウスセミナーの案内文の中に<予防原則>という言葉を不用意に使用したため、野池氏よりお叱りを受けました。
野池氏の指摘は、かいつまんで述べると「定量 的・定性的把握無しで予防原則という言葉を使ってはいけない。原則というからには、数値やデータなどによる定義づけの上に使用すべきである。」 ということでした。
<予防原則>を「安全性が確認されていないものは、安全側にたって考える」という位 の軽い気持ちで編集人は使用したのだと思われます。編集人、発行人ともどもここに反省いたします。
という事で、このコラムは始まるのであった。
 「伝統構法」が見直されている。「高度な仕口や継手の採用」「釘・金物は使わないし、プレカットもしない」「構造は貫構造で壁は木舞をあんだ土壁」といった類のものである。
議論が情緒的であったり、郷愁が入っていたりで、明確な定義はまだなされていない。
ちなみに建築基準法や住宅金融公庫仕様のものは「在来構法」と呼ばれている。
 2002年9月〜2003年2月まで月1回、計6回、NPO「木の建築フォーラム」主催の増田一真塾(構造設計の第一人者)に「伝統構法」を学んできました。場所は母校の工学院大学(東京・新宿)で懐かしく、出身研究室にも顔を出したりして旧交を温めました。  閑話休題、以下の事は理解できました。
伝統構法は柔構造として完成しており、筋交使用を前提とした「やとわれ外国人」伝来の剛構造により否定されたこと。
在来構法は伝統構法の三次元的立体架構を否定して自立壁型の平面 構造としてスタートしたこと。
そのため
  イ) 構造即意匠となっていない
  ロ) 平面架構の集約で立体構造ではないこと
  ハ) 応力分散型ではなく集中型であること
  ニ) ボルトや金物に頼りがちになること
  ホ) 合成部材化でなく単材中心であることが指摘される
 しかし、いくつかの疑問もあります。
地震力の入力→木架構の挙動→基礎→地盤への応力の流れが体系的に不鮮明で、まだ在来構法の考え方がシンプルでわかりやすい。
在来構法の実物大実験で筋交の弱さ(金具部分のもろさ)が指摘されるが、実際はプラスタボードや木ずりが余力を分担していることがあり実際的ではない。
伝統的構法の技能・技術が各地方ばらばらで、体系化された思想のもとに集約されていない。例えば、足固めがあったりなかったりすることや足元は束立なのか、土台+布基礎なのかなどなどである。
で、現時点での「伝統構法」への評価はどうかというと、私見ではあるが
経験的に言って在来構法でも50年〜80年は保てる。メンテナンスをきちんとすれば、100年程度はOKである。「在来構法を改良する」視点から、「短ホゾ+金具」を「長ホゾ+込栓」あるいは「腰かけ継手」を「追かけ大栓継・金輪継」といったような金具ばかりに頼らない構法とすること、「差鴨居」を採用することなどもあまり手間をかけずにやれることです。
200年位保つ住宅をつくるには伝統構法しかないと思われます。ただし、工期は1年以上、建築坪単価は80万円以上は覚悟しなければいけないでしょう。                 
  また、建築確認申請を行なう場合には、伝統構法の場合(在来構法でない場合)は木構造計算書をつけなければいけません。これができる木構造技術者が九州に何人いるでしょうか?同じく、ひとりよがりではない「伝統構法」をやれる大工もそんなにいません。中には「在来構法+土壁」を「伝統構法」と称しているものもありますから・・・。
※坪単価50万円〜60万円台の家で50年〜80年保つ寿命のものを望むのであれば在来構法あるいはそれを改良した構法で十分である。しかし、「伝統構法」も今、再評価が進んでいる途中なので、10年位 たったら「伝統構法しかない!」ということになる可能性はあります。現時点で現実的にいえるのは以上です。
 

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