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西村敏彦のほらふき・ドンドン

シックハウス問題以降の「これから」を考える2
 「地産地消」の家づくりを定義した時、“九州各地の素材・材料・製品を使用した北部九州での家づくり”と考えてみます。
  私たちの住む北部九州の気候の特徴としては、夏は高温多湿でありながら、冬はことに内陸部においては寒くて、晴れの日が少なく曇天の日が多いということがいえます。天草や宮崎や鹿児島のように、夏を主体にした家づくりではなく、北部九州は夏・冬の両方の備えが必要な家づくりが要求されます。温熱・湿度環境を意識した家づくりを考える場合、自然素材というものは有効な手段となります。木や紙や土、どれをとっても特徴的な事は調湿作用があるということです。上述したような家づくりを考えた場合、自然素材というものはシックハウス対策とともに地域型住宅に対しても強力な味方となってくれます。
  宮崎・大分・熊本は日本有数の林産県です。今話題のケイソウ土は大分の生産量 が日本一です。当地筑後八女は九州有数の和紙の産地です。そのような自然素材をたくさん使って、北部九州という地域に“「文化」としての「木の家づくり」”を根付かせたいと思っています。 「地産地消」の家づくりの幸福な例は「土佐派の家」です。「土佐派の家」とは、建築家 山本長水氏を中心に、高知県の杉を使い、伝統的な土佐漆喰と和紙を主な素材とし、伝統的な意匠・構造を現代という埒の中で解放させた、いわば「土佐」という文化を家の型で表現したものです。暖かい南国・高知―それ故、軒を深く、居室はすべて掃き出し窓、玄関は最低3帖、一間半のフスマの間仕切りは三尺幅のフスマ3本で敷居は3本引き。3本引きなら1間開けることができ、これは温暖地高知での通 風を考えてのことです。使用する材のほとんどが地杉、建具も木、壁は土佐漆喰あり砂漆喰あり、更には土佐和紙に柿渋を引いて、フスマはもとより壁や天井にまで貼りめぐらせている。同じような素材をつかいながらも作り上げられた家一つづつが調和的な個性をかもし出しています。それらの家の建つ棟数が新築戸建住宅の5%を占めるというのですから、まさに“土佐派の家”は現代を生きる文化としての家だといえます。その上ハウスメーカーと同じようなコストでできるというから驚きです。事実、高知でハウスメーカーの家は他県と比べて少ないように思われます。
 さて、私たちの北部九州での“地産地消の家づくり”をパラレルに「土佐派の家」と比較した場合の課題も出てきます。
 「土佐派の家づくり」の成功はつくり手が伝統的な構法や技術あるいは素材に対して大きな信頼を寄せていた事が上げられます。いたずらに形態の新しさや新素材、機能の過剰装備に惑わされず、伝統の中に見出された洗練された技や過酷な自然に対応できる十分な機能性に基づいたデザインが住み手に対して安心感を与え、受け入れられた理由だろうと思われます。つくり手の技能者(職人)への信頼感は新しい工法や構法の開発を可能にしました。壁、天井への和紙貼り、砂漆喰の中塗り仕上げや地域材の特徴を考えて一間半×2間を基本グリッドとして大きなスパンをつくらず一般 的に流通している4寸×8寸の材を最大の部材にとどめた納屋型の民家構法などである。
 さて、私たちの課題である。今、「貫構法+土壁」の再評価が進んでいます。「貫構法+土壁」には靭性があり、耐震性の部分で近々建築基準法上の壁倍率が見直されます。そこで土壁ですが、その断熱性はグラスウールやリサイクル羊毛のような綿状の断熱材やポリスチレンフォームや炭化コルクの板状の断熱材と比べて低いようです。南国・高知ではザルのような壁でよいかもしれませんが、当地の場合、前述したような風土なので、断熱性は高めなければなりません。土蔵の壁の厚みは30〜25cm程度あり、断熱性は十分なのですが、コストの面 からそのような厚さの土壁をつくるのは現実的ではありません。したがって、土壁とその他の断熱材をもちいた「ハイブリッド断熱」といったものを考えないといけません。それから地杉にあった柱や梁の断面 の規格決定やその規格のストックの問題です。その材を生かす大工や地元の土の使用にこだわる左官や和紙を貼る表具師は少数ながらまだいます。むしろ、その技能を生かすようにデザインする構造技術者が不足しています。伝統的構法を現代の眼で再評価し、新しい技術とドッキングさせてゆくことも重要な事です。あと細かな材料のことで言えば、瓦の問題があります。瓦は三州、石州、淡路の産地が有名ですが、九州のは伊万里、城島、宮崎どの産地のものも焼きが甘く寒に弱いところがあります。瓦メーカーに働きかけて、質の高い製品を作るように説得しなければならないでしょう。
 私たちが一工務店としてできるのはそこら辺りまででしょうか。総論的に言ってしまえば「(伝統)文化の継承」「地場産業の活性化」「職人の育成」「経済性」「官民一体の取り組み」といったキーワードを大事にしながら一般 社会への浸透を計っていかなければなりません。私たちのような「点」をつなげて「線」とし、更には「面 」と成長させていく活動が必要になります。前述したようなキーワードのポジションで協力者と協働しながらリーダーシップを発揮する人、組織が必要となります。そのリーダーシップをとるのは誰なのでしょうか?
 

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