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西村敏彦のほらふき・ドンドン
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| 住まい方を創る 第3回 |
| §3.だんらんとは?
:居間の「今」を考える 家族の「だんらん」ということが言われる。では一体「だんらん」とは何なのだろう。 「だんらん」とは家族が集まってなごやかで楽しいひとときの時間をもつことだろうか? ごく最近まで家庭は「生産」を支える家族のシェルターだと考えられていた。家庭は工場や会社で働く働きばちの「企業戦士」の羽を休める場所であり、一生懸命働いて家族が豊かな生活を実現することがよいことだとされていた時代の虚構の巣であった。そのため妻は賢明な専業主婦でなくてはならず、子供たちはよい大学・よい会社へと意味を考えず上昇志向を抱く。このようなシステムを社会学者の上野千鶴子氏は「近代家族」と呼び、その解体を叫んだ。「近代家族」は戦後復興のために必然的に生み出された制度と思われるだろうが、実は戦前からの置き土産なのである。「隣組」に代表されるような国家総動員法的システムが確立していて、日本の奇跡の戦後復興はそれがそのまま戦後に受け継がれ、うまく機能したことが原因とされている。第二次世界大戦のニュース映画を見ると、工場にかり出された男たちを「産業戦士」と呼んだり、銃後を守る女たちは強く賢明な国家のための「妻」や「母」でなければならなかった姿が写 し出されている。上野氏はこの「近代家族」をナンセンスと叫び、脱工業化社会を迎えた現代に「家庭」はただ「消費」の場となり、上昇志向のモラルを失い漂流している姿を認め、新しい家族・家庭をつくりなおすことが急務だとした。建築家の山本理顕氏もこれに応えて「岡山の家」などでそのような試みをやっている。家族の関係を特権化せずに家族の構成員個々の地域の関係や友人関係を家族と横並びに考えるというラジカルなものである。 * * * だんらんに関わる装置として農家には「いろり」というものがあった。 「いろり」の持つ機能とは単に採暖や炊事だけのものではなく、乾燥や貯蔵にも利用され、接客や家族のだんらんの中心であった。「いろり」の上に乾燥棚(火棚)を吊り、ゆれた薪や衣服を乾かし、梁の上にはタネや野菜が貯蔵され、床下でもいろりの廻りにジャガイモなどを囲い凍るのを防いだ。ここには「いろり」を中心とした豊かな世界があった。それは安定した秩序であったといえる。「いろり」という非常に多目的な機能を備えた空間に家族が集中し、まさに「だんらん」と呼ばれる生活が定着していたのである。しかし、「いろり」のまわりにはその座る場所によって厳密な家族関係があったのである。 「ヨコザ」 = 主人または長男の場所。 「キャクザ」 = 客の場所。 「カカザ」 = 主婦(嫁ではない)の場所。 「キジリ(木尻)」= 次男以下の場所(=煙くて寒い場所)。 このように前近代的な封建的な家族秩序が存在していたのである。 時代の推移とともに「いろり」はなくなってしまった。それは家族の封建的な秩序そのもがなくなったということもあるが「いろり」の持っていた多目的な機能が分化したからである。「いろり」での接客は玄関へ。「いろり」での採暖は暖房機器へ。「いろり」での調理は台所へ・・・などなど。様々な機能の分化とはくらしの発展のように見える。「だんらん」の生活にはこの「分化」の理論が通 用するのだろうか。私たちは決して封建的な家庭秩序の復権を望むものではないが、かつては「いろり」という一種の完成された庶民の「だんらん」の空間が存在していた。今、このだんらんの空間を「居間」だと規定した時、これに匹敵するだんらんの空間を考えてゆかなければならない。住宅の中で居間以外の部屋はそれぞれ明確な一定の機能が定まった(機能が分化した=風呂・トイレ・寝室・台所・洗面 室・・・・)部屋であり、居間こそが唯一多目的な機能を吸収すべき、あいまいな部屋として残されている。 * * * モダンリビングという言葉がかつて流行した。モダンリビングの中心はリビングセットであった。洋家具としてのソファーと小さなテーブルを一組として居間の中央に置くのである。決して広くない居間にこのセットを置くことが流行した。ソファーはいかにもゆったりしていて、座り心地がよさそうである。眺めているだけならば座ってみたくなるのがソファーである。しかし、これに長時間座っていると疲れるのである。少しの時間はよいのであるが案外姿勢を自由に変えにくいのである。したがって日本人の多くはソファーの上で横になってしまったり、あぐらをかいたりしはじめる。そのついでに枕を持ってきたり、新聞を置いたり、背もたれにパジャマを掛けたりし始める。こうなってくるとモダンリビングというイメージからかけ離れてしまう。そのうち冬になるとどうしてもコタツが欲しくなり、小さなテーブルを脇にどけてコタツをソファーの前に置くのである。するとソファーは格好の背もたれになるのである。ちょいと手をのばせばソファーの上の新聞が手にとれるのである・・・・。 (続く) |
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