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野池政宏のこらこらコラム
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| 「炭パワーは本物か?」 |
| 炭にはいろんなパワーがあると言われている。化学物質を吸着する、湿度を調節する、マイナスイオンを出す、遠赤外線を出す、などなど。化学物質を吸着したり、湿度を調節したりするのはまあその通
りなのだが(それでも使い方によっては効果は得られないけど)、マイナスイオンを出すのは嘘だし、遠赤外線も出していることは出しているが、別
にそれで何か特別に得られることはない。 テレビで言っていることのほとんどはオーバーな表現か、科学的に間違っているか、場合によっては完全な嘘であることもある。テレビの生活番組でマトモなのは「ためしてガッテン」くらいだろう。「あるある大辞典」は見ないほうがいい。僕はアホらしくてもう2年くらい見ていない。 さて。炭パワーでもっともひどいのが「磁場がどうのこうの」という話である。炭を地面 に穴を掘って埋めると、土地の磁場がよくなって、健康になったり商売繁盛したりするという話があるのだ。最近ではもっとお気軽に、部屋の中に置くだけでそんな効果 があると言って炭を売っている人がいる。 結論から言うと、そんな効果 (健康になる、商売繁盛する)はない。黄色い財布を持つと金持ちになる、という宣伝文句の財布の折込チラシがたまに入るが、これと同じだ。財布ならまあ数万円の出費で済むだろうが、炭を地面 に埋めると数十万円取られたりする。 こんなものにお金をかけるより、国産の木をたくさん使ってほしいし、健康に気を使いたいんだったら、内装にお金をかけるとかのほうが圧倒的に賢い。 実際例を示そう。ウチの近所に「炭パワーの喫茶店」というのが5年ほど前にできた。ミニコミにも取り上げられたりして、話題になっていた。でもその喫茶店は開店1年ほどでつぶれた。 こういう例があることを「炭を埋める商売」をしている人に言ったらどういう反応があるか?「いや、それは使った炭が悪いか、その方法が悪い。ウチではそんなことは絶対にありません」と必ず言うだろう。いくらでも逃げ道はあるのだ。 もっと悲惨な例を示そう。僕は10年ほど前、炭パワーを心から信じていた人(Aさんと呼ぶ)と一緒に仕事をしていた。Aさんはことあるごとに「野池くん。炭には不思議な力がある。炭を扱っていたら健康になるし、絶対に幸せになれる」と言っていた。当然、Aさんの家には炭がふんだんに使われていた。そしてAさんは本業で貯めたお金を使って炭の商売を始めた。結果 、炭の商売はうまくいかず、多大な借金を抱え、Aさんはあわれな結末を迎えた。 もう十分だろう。こんな話はいくらでもあるがこれ以上書きたくもない。 今という時代は、市場経済や工業化社会のよくない面が噴出し、それとともに現代科学を見直そうとする時代である。それは決して悪いことではないが、現代科学を全面 的に否定し、「現代科学でわからないことにこそ真実がある」という風潮が生まれてきていることは本当に怖いと感じる。 「波動」という言葉を聞いたことがあるだろうか?とにかく宇宙から身の回りにあるものまでを「波動」で説明するようなオカルト科学である。ちょっと大きな本屋に行けば「波動本」が何冊も見つけられる。 炭に関しても「よい炭からはよい波動が出ている」というような話があり、「電子レンジで調理したものは原子力発電の波動が移っているので体によくない」とか「この化粧品は宇宙波動と調和している」というような、この手の話を馬鹿馬鹿しいと思う人にはあまりにも馬鹿馬鹿しく、この手の話が好きな人にはあまりにも魅力的な話が世の中にたくさん出回っている。一時にくらべれば「波動パワー」も落ちてきて、出版される本も少なくなったようだが、逆に定着したのではないかと思うとげんなりする。 こうしたオカルトをオカルトと思って付き合うのであればそれはまったく構わないと思う。それこそ個人の自由である。でもこれを「本当だ」と思って高価なものを買ったり、人に薦めたりするのはやめてほしい。もし暇な人がいて、この手の商品を「誇大広告だ」として訴えたら、ほとんどすべての商品が当局から摘発されるだろう。 もうひとつ非常に気になるのが「環境問題に関心がある人にこの手のオカルト科学を信じている人が多い」というところである。確かに物質主義(科学万能主義)に偏り、それを反省すべき時代に来たことは間違いない。人の心が変われば環境問題は解決する、というのもまったく間違った意見ではない。しかし環境問題を解決するには「科学」が不可欠である。 環境問題を解決するために人々に伝えていくべきものには2つの段階があると思う。ひとつは「環境問題の現状を伝え、環境問題の解決への行動を起こそうとしてもらう」という、いわゆる「啓蒙」の段階。もうひとつは「具体的にどうすればよいのかを伝える」という「方法提示」の段階である。この1つ目の段階で「心に訴える」というのは有効な手段だろう。「物質主義からの脱却」を説くことで共感し、行動に移そうとする人もいるだろう。しかし、「方法提示」の段階では「具体的なもの」が必要になる。そしてこれには「科学」が必要になってくる。環境問題の現状を分析するのは科学であり、解決の具体策を提示するにも科学に頼るしかない。 話しをモトに戻そう。新築時に「炭を埋めましょう」と言うようなつくり手は「お金を大事にしているつくり手ではない」という判断をしてよい。また「科学的な考え方ができないつくり手」という判断をしてもよいだろう。 家づくりにも「科学」は不可欠である。現代科学を否定するなら、建築基準法などの法律に書いてあることも全部否定すべきだ。大地震が来ても倒れないような「波動」をもった家を誰かに建ててもらえばよい。そんなつくり手は存在しないだろうが。 オカルト科学は「健康」という曖昧で都合のよいところだけに入り込んでくるのだ。 |
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